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Team GENERATION - 読み物 - 小説

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小説の場所へようこそ、ここでは運命の書いたお話仕立てのシナリオを載せています。随意作成中のものは本当にいつアップされるかわかりません!そこらへんは本当にご了承ください!なお、この中には18禁コンテンツも含まれます。18禁アイコンがついているものは濡れ場がある文章だと思ってください。




2006年10月2日投稿、小説:運命、イラスト:HEIM、音楽:A5




恭介は別に、こだわってサークルに入ったわけではなかった。
最初はなんとなく、適当でもいいので遊べればいいかなという動機で、いくつかのサークルを掛け持ちしていたような気がする。
それでも、いくつかのサークルとは未だに交流も持ち、今サークルの部長をしている飲み会サークルは、自分も酒が好きだからという理由でかなりの責任感を持っている。
まぁ、大学のサークル運営なんぞ、ぶっちゃけ曖昧なのでかなりの資金をサークル部会から踏んだくっているわけだが。
「……そういや、弘樹はサークルとは関係ないところで知り合ったんだっけな」
馬鹿に素直な後輩だったな。
初めて会ったときなんぞ、思い出すつもりもない。
ただ、いつの頃から話しても、あの後輩は常に、親友に近い人間だった気がする。
初めて会ったときから、ずっと深いレベルでの友人だったような、そんな錯覚があった。
「弘樹先輩、ですか。あの人、今どうしているのでしょう?」
「んー?あぁ……」
「そうだ!俺たちに何の相談もなしに大学を辞めた盟友・弘樹は一体今どうなっている!?えぇぃ答えろ!答えるんだ朋友よ!」
「勝手に俺を朋友とか言うな、宏昭」
気分は暑苦しいが格好はラフな男、金沢宏昭(かなさわ・ひろあき)がガクガクと恭介の肩を揺さぶる。
どうにも、この男は苦手だと思ってしまう恭介がいる。
いや、別に嫌いなのではないがいちいちうざいのが難点か……。
「こらぁっ!恭ちゃんをいじめるなぁっ!」
ドゲシッと見事に国語辞典が脳髄に直撃して、宏昭は沈黙した。見事な投球術で人体の弱点を見事に的中させたのは祢音である。
「ナイスアタック祢音。っと……そういやシア、宗也と会ったから伝言だ。いつまでもコスプレばっかりしているんじゃねぇってよ。今日、珍しく普通の格好してるみたいだけどな」
長い銀髪がとても特徴的な女性……シア=ガーランドはにこにこした顔を崩さずにうれしそうに言葉を弾ませた。
「そうですか。でも、鷹山先輩、宗也がそんなこと言うはずないじゃないですか。伝言はちゃんと伝えないと意味がありませんよ?」
「どうして、宗也がそんなこと言うはずないってわかるんだ?」
シアは笑顔を崩さず、とてもうれしそうに旧友のことを語る。


そんなシアの様子を、祢音はどことなく退屈そうに見ながら、椅子に腰をかけた。
「宗也は私のコスプレ癖に関しては諦めていますし、それに宗也の場合は私に関してそこまで興味を持っていないので例え諦めていなかったとしても何も言わずに個人の趣味だと言い切ると思いますよ」
この女は、本当によく宗也のことを理解しているようだ。
恭介も、宗也のことは大まかに理解していて、今のシアとまったく同じ感想を宗也に対して思うだろう。
それだけ、シアは宗也と近い存在だということの証明でもある。
「ねぇねぇシアちゃん、そのうちその宗也って人のことも教えてほしいな~」
祢音がとても退屈そうに、そう呟いたのを見て、恭介は軽く祢音の頭を撫でた。
うにゃ~と猫のように目を細めながら、祢音は気持ちよさそうな声を上げる。これで多少、機嫌がよくなるといいななんて、考えてしまう。
祢音のそんな様子を見て、シアが軽く苦笑した。
「宗也と祢音さんは多分、合わないと思いますよ?外見は多少鷹山先輩に似ていますけれど、中身は似て非なるものですからね。あれは付き合うのに苦労します」
それでも、笑顔は変わらない。
基本的にシアは、常に微笑みを携えているお嬢様的な印象がある。
実際、親には大和撫子になるようにと育てられて、それを素直に受け入れて生きてきたからなのかもしれない。
「それにしても、祢音さんは本当に鷹山先輩が好きなのですね。鷹山先輩と一緒にいると気分がよさそうです」
いきなりの直球発言に対し、祢音は何の躊躇いもなく、
「うん、私恭ちゃんのこと大好きだから」
迷いも何もない祢音の純粋な、真っ直ぐな気持ちに、恭介は思わず顔を赤く染めてしまう。
あぁ、なんというか、祢音がこういう人間なのはわかっているんだが、どうにもみんなの前でこうやって大好き発言をされてしまうと照れてしまう。
「今日も恭ちゃんちに行ってから家に帰るんだもんね~?」
「いや、ね~、なんていわれても困るんだが……」
「ぐ……ふ……俺も、行くぞ……朋友……」
「いや、来なくていい。っていうかむしろ来るな」
「そうだよ!私と恭ちゃんの時間を邪魔するなんて、なんていい度胸!」
いや、そういう問題でもないだろう、祢音よ。
そんなことを言って、周囲の人間が俺たちの仲を勘違いしたらどうする、と言葉をつなげようとして、やめた。
どうせ、恭介と祢音の仲は恋人同士などという甘い関係ではなく、友達以上恋人未満な、とても曖昧なものだからだ。
出来れば、恋人になってほしいなんて、思わないわけでもないのだけれど……。
そう言葉にするには、どことなく躊躇ってしまってダラダラと今の関係を続けてしまっている。
恭介たちのそんな状況を、シアは目を細めながら見ていた。
どことなく保護者チックで、その輪の中には入らずに傍観に徹している。
こういうところ、この女はしたたかなものだと、恭介は出会ってからずっと思っていた。
「シア、お前も馬鹿を止めろ。俺たちだけじゃ止められないから」
「私もそういう連中の相手は高校時代で慣れたものですが、できれば大学時代では関わりたくないと思っているので遠慮してもよろしいでしょうか?」
そういわれると、なんとなく断りにくい……。
なんというか、本当にこの女は、したたかである。
「誰が馬鹿だ!俺は決して馬鹿ではない!勝手に馬鹿どもと一緒にするな!」
「お前の発言は即座に止めるぞー。その無駄な選民意識の高さには軽く尊敬の念すら覚えるけどな」
「ハハハハハ!ならば褒め称えろ!世の中には俺のような人間が必要なのだ!」
「恭ちゃん、私絶対こんな人いなくても世の中回っていくと思うんだけど」
「あぁ、こんな人間は社会のシステムに組み込むほうが難しかったりするからな」
「そうだね。社会学においてもこういう、自己と他者の線分けがはっきりしすぎている人間は敵として見たほうが多分いいと思うよ」
「祢音さん、社会学的に見なくてもこういう人間は他者として見たほうが楽しいと思いますよ」
散々な物の言われ方には変わりないのだが、宏昭は褒められたと勘違いして高笑いをしていた。
面倒見ていられないな……なんて思って、恭介は席を立つ。
こんなときに、弘樹がいたらどんなに楽な気分になるだろうかなんて、思ってしまった。
弘樹が隣にいると、どことなく気分が楽になる。無理に、自分らしくなく誰かを引っ張っていくことなどしなくても、弘樹がみんなを引っ張っていってくれるからである。
本当に、不思議な男だ。
「恭ちゃん、気分でも悪いの?」
「……いや、そういうわけでもない。今日は他にはもう来ないんだろ?俺も帰っていいか?」
その言葉に、シアはわずかながらに眉根を吊り上げる。
シアのこんな顔は、そうそう拝めない。
「あの、この物体を置いていくのですか?」
最早、宏昭のことを人間扱いせずに物扱いしているそのことには、恭介は特に触れなかった。
代わりに、小さくため息をつく。
「……まぁ、後頼んでいいか?鍵はシアが返しておいてくれ」
「ため息をつきたいのはこっちです……。まぁ、鷹山先輩に頼まれたら断るわけにもいきませんから、私が鍵を返しておきますね。他の方が来た場合、その方々に鍵を渡してもよろしいですか?今日は……茶道のお稽古がありますから」
不安そうにそう尋ねてくるシアに、恭介はわずかながらに思案しながらも言葉を選ぶ。
「そうだな……まぁ、どうしても時間がやばくなったら、ソレを締め上げて勝手に帰っていいぞ」
「はい、そうさせていただきますね」
部屋を出ようとしたときに、祢音が恭介の腕を掴む。
「待って待って、置いてかないでよ恭ちゃん」
「ん……」
祢音を脇において、恭介はゆっくりと歩き出した。