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Team GENERATION - 読み物 - 小説

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小説の場所へようこそ、ここでは運命の書いたお話仕立てのシナリオを載せています。随意作成中のものは本当にいつアップされるかわかりません!そこらへんは本当にご了承ください!なお、この中には18禁コンテンツも含まれます。18禁アイコンがついているものは濡れ場がある文章だと思ってください。


登場人物紹介を読む
  

俺は神様なんて信じない。
そんなものがいるとしたら、もう少し世の中ってもんをまともに作ってくれるに決まってる。
犯罪者が平気な顔して逃げ回ることなんてないだろうし、人が怪我して死ぬことなんてないだろう。
だから俺は、神様なんて存在は信じない。
そう……信じない、つもりだった。
ぷはーと、空を見上げる鷹山恭介(たかやまきょうすけ)はいつものように煙草をくわえ、その煙で遊んでいた。
ドーナツ状になる煙を見て、自分も随分と器用になったものだと、そう思う。
時計を見やると、そろそろ待ち合わせの時間。
人通りの少ない時間帯を指定してきたのは、人ごみが余り好きではない恭介である。
「ふぁ……」
と、小さくあくびをすると、左方からパタパタと駆けて来る音が聞こえた。
「あ~、恭ちゃんやっぱり先に来てた~」

パタパタという音に付随する声は、まだ若い。
待ち合わせの相手には一瞥もくれずに、恭介は再び煙草を口に戻す。
「よう、祢音」
待ち合わせの相手、日暮祢音(ひぐらしねおん)との出会いは、半年前に遡る。
まだ、梅雨を明けたばかりで初夏とも言えない、6月の末。
恭介は奇妙なものを見た。
女性を取り囲み、叱咤している若者の集団。いつもなら無視して通り過ぎようとするところだったのだが、あの日、あの時に見た、女性の顔……そして、艶やかな髪色。
それらに惹きこまれるようにして、声をかけていた。
何のことはなかった。単に、双方の勘違いにおける言い争いにしか過ぎなかった。
その程度のことで、若い衆が女一人取り囲んで馬事暴言を吐くなんざ、世の中も末だな。
そんなことを、当時は思ったものである。
助けた女が、その祢音だった。
その当時、祢音が言われたことが、今でも耳に残っている。
『どうして、割って入ってきたの?普通の人ならそんなことしないよね?』
後々、彼女と親しくなるにつれてどうして彼女がそんな物言いをしたのか、明らかになっていったが、当時は彼女とこんなに親密になるなんて思ってもいなかった。
偶然だったのだ。
家が実はとても近かった、とか、彼女が自分の大学の後輩だった、とか。
ここまで偶然だと、逆に何か運命じみたものがあるのではないかと、恭介は笑ってしまう。
神様なんか信じてねぇのに、運命じみた女と付き合いが出来るとは思ってもなかったよな。
祢音は、大学では割と有名だった。
東大に行ってもおかしくないほどの天才……デッドゾーンの人間だったのだ。
IQ180~200間の人間をデッドゾーンの人間と言うのだと、大学の教授が言っていた。
ちなみに、祢音のIQは193。それゆえに一般的な常識にはどこか疎く、行動には単純な快楽思考なもの、興味思考から出ているものが非常に多い。
「そういえば、デッドゾーンを超えた天才には会ったことないね」
祢音は自分がデッドゾーンだと理解していながら、そう語る。
別段、恭介もそういうのに詳しいわけではないが、祢音以上の天才の話は実際に聞いたことがある。
なんでも、東北のほうにある大学にいる、元名家のご令嬢がデッドゾーンを超した天才らしい。
もちろん確証を持った話でもないし、友人伝手に聞いた話なのだから定かではない。
ただ、そんな怪物じみた女よりも、目の前にいる天才のほうがよほど信じられるとそう思っている恭介がいた。
「それで、今日はどうするんだ?」
「恭ちゃんはどうしたい?」
「俺は別に……いつも祢音に決められてるだけだからな」
ずり落ちそうな眼鏡をくいっと直すと、ようやく、今日の祢音の格好を見やった。
祢音はとても綺麗な女性だ。
身体のラインは丸みを帯びていて、顔は多少彫りが深い。
茶っ毛混じりの髪の毛に嫌味はなく、彼女曰く、もともと色素が薄いらしい。
年齢よりも明らかに年上……20代の半ば頃に見える彼女も、実はまだ19歳である。
大学も春休みに入り、来年度からは祢音は2年、自分は大学院へと移動することになる。
こんな時代が俺にもあったものだ……。
「もう、恭ちゃん、今日もあんまり寝てないの?」
ぼーっとしていた恭介に、祢音の手が頬をぱーんと打つ。
快活な音が一つ、軽い痛みと衝撃が頬に伝わり、脳を覚醒させていった。
この女は本当に、常識というものがないらしい。
いや、信じられることは恐らく、自分が考えて感じたことだけなのだろう。
そう考えれば、こういう仕打ちも大して腹を立てることでもない。
「いや、昨日はしっかり6時間睡眠を取った。だから、別に頬を叩かなくてもいい。っていうか普通の友達にこういう真似はするな」
「あ、ごめんなさい。恭ちゃんと私だけね?うん、わかった……秘密の仲だもんね」
秘密の仲、というのを、祢音はやたらうれしそうに語る。
彼女にだって、普通の人付き合いはある。
しかし、やはり距離を取られてしまうらしい。そんな距離を置かない恭介との関係は、彼女にとっては秘密と秘密を話せる、秘密の仲になる、らしい。
「意味がわからないな……相変わらず」
ふぁーとあくびを一つ。
別段眠くもないのだが、とりあえずあくびをしてしまうのはもはや体質なのかもしれない。
それを見て、祢音はやはり心配そうに恭介を眺めてきた。
祢音の身長は、割と高いほうなため、恭介の顔を覗き込むことなどたやすい。
「恭ちゃん、朝御飯はちゃんと食べてきたの?」
「いや、まだ食ってない」
時間は、昼にはまだ早いが朝と言うにはもう遅い程度。
起きて軽くシャワーを浴びてからすぐに来たわけで、朝御飯を食べている状況ではなかった。
「駄目だよ、恭ちゃん。朝御飯は一日の元気の源なんだから……とりあえず、恭ちゃんの家に行って、ご飯作ってあげるよ」
年下だとか年上だとか、恭介は余り気にしないつもりなのだが、祢音はどこか恭介よりも年上でありたい、とか、ちょっとしたお姉ちゃんでありたいと思っているような節がある。
まぁ、それで空回りしてしまうような祢音を見るのを、どことなく愛しいと感じてしまっている恭介もいるのだが……。
不覚、だよな……うん。
「適当に、コンビニでおにぎりでも買えば腹もいっぱいになるだろうさ」
「買うだけじゃおなかいっぱいにならない!それに、コンビニで買うのなんてどんな添加物使ってるかわかったもんじゃないんだから、やっぱり私が作るの!」
頑固者、と小声で言おうとして止めた。
別に、コンビニで作っているものが何を使っているのかわからないというのであれば、スーパーに置いてある野菜だってどんな農薬が使われているかわからず、肉や魚もどんな餌を食ってきてどんな影響があるのかだってわからない。
結果的に、全て一緒なのだ。なんの変わりもなく、遜色すらない。
めんどくさくなった恭介は、空を見上げた。
周囲の雑踏やビルのせいで、空が薄ぼんやりと感じるのは、自分の心もこの都会のように穢れているからかもしれないと、時たま思う。
中途半端に聡い人間はよくないな……。
「わかったよ、祢音。一旦、アパートに戻ろう」
ため息も同時に出たのは、どことなく期待に満ちた祢音の顔を見て、少しだけ不安を覚えたからだった。

「恭ちゃん……」

ご飯を食べ終わった後、やはりという感じで恭介はため息をついた。
熱っぽい祢音の目を見ると、女を教えてしまったのは間違いだったのではないかと恭介は思う。
そういう行為自体は、さすがの祢音も知っていた。
ただ、それがどうして快楽を得られるのか、それでどうして子供が生まれるのかまでを彼女は知識として知ってはいたのだろうが、どういう事実であるかまでは知り得なかったのである。
先ほどまでの大人ぶった態度はどこへ消えたのやら、祢音は猫のように擦り寄ってきて、恭介の首筋に手をかける。
白い手が、くすぐるようにして頬まで持ち上がってくる。
「なんだよ、祢音、我慢できないのか?」
「我慢なんて、するつもりないもん……。恭ちゃんだって、こうなることわかってて私のこと部屋に入れたんでしょう?」
「……」
恭介は、それには答えなかった。
別に、祢音と恭介は恋人同士、というわけではない。
ただそれでも、恭介は男なのである。無防備な祢音の誘惑……ある種それは淫魔の誘いのようなものであったのかもしれない……に、逆らいようもなく、下心がまったくないわけではない恭介はアッサリと陥落してしまった。
それ故に、祢音の言葉である、自分は全てわかっていたというような言い方をされると、若干罪悪感を感じてしまう。
『卑怯よ、そうやって、全て知っていたんでしょう?』
昔付き合ったことのある女にそういわれたことを、恭介は思い出した。
別に何か知っていたわけでもないが、年上だった彼女が浮気をしていることくらい、わかっていた。
それでも口を出さずに、自由にさせていたことを、元彼女は卑怯だと言っていた。
気を惹きたいのなら、化粧でもすればよかったのに、料理でも作ってくれればよかったのに……ある意味卑怯な裏切りをしたのは其方ではないかと思いすらした。
だが、恭介はアッサリとその事実を受け入れ、別れを認めたのである。
別に、自分が思ったところで事実関係が変わるわけでもなし、ならば素直に身を引いたほうが互いのためでもあろう。
それに今は、恋人というわけではないにしても、こうして肌を合わせることの出来る友人がいる。そうした関係で満足してしまっている自分がいる。
「わかったよ……。ベッドに行こうか、祢音」
8畳一間のこの部屋の隅にあるベッドは、ちょうど南から光が差している。
角部屋にした理由は、やはり太陽の光をいっぱい浴びたいからという願いだった。
しかし、こういうときに窓が大きいと、外から見られる可能性もあるので最近では頭を悩ませている。
サッと、申し訳程度にカーテンを閉めると、部屋の中は薄ぼんやりとした明るさになった。
それでも、互いの顔はよく見える。
「ほら、もう脱いでいいぞ」
「うん、ありがと、恭ちゃん」
脱ぎながら恭介に抱きついてくる祢音は、やはりどこか熱っぽい。
自分がこれからされることに対する期待なのか、それとももう……我慢が出来ないのだろうか。
自慰を覚えたばかりの中学生みたいだな、なんてナンセンスなことを思ってしまう。
スカートを上げて、中のショーツをゆっくりとずり下げた。
生足だったということは、最初からそういう目的だったということは明白である。
「ん……?」
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴという、くぐもった音が聞こえてくる。
それは、ベッドのすぐ上、先ほどまで着ていた上着のポケットから鳴っていた。
バイブにしてたか……。
電話だと後々面倒なことになる可能性もあるため、祢音を止めて一旦電話を取る。
メールの着信、相手は祢音と出会った頃に大学を辞めた後輩だった。
辞めた理由なんて教えてもらえなかったが、それを聞くほど恭介は野暮な人間ではない。
ぱちっと電話を開けて、中身を確認する。
「恭ちゃん、誰から?」
「ん……弘樹だよ。ほら、夏に大学辞めたあいつ」
「あぁ、あの面白い子?」
「うん、まぁ……面白い子だってことは俺も認めるわ」
とんっと俺の胸に身体を預ける祢音の頭を、ゆるゆると撫でながらメールの内容を見た。
どうやら、大学に合格したとか、そんな内容のメールだった。
簡単に祝いの言葉と、再び関東に戻ってきたら再会しようという内容を嗜めて、送信ボタンを押す。
「私も会いたいな。あの人はなんていうか、結構好き」
「……そっか」
純粋な言葉であるにも関わらず、どうにも心が乱れそうになる。
俺は、祢音が心配なだけだ。……それに確か、弘樹には恋人がいたはずだし。
他人のことは知っているくせに、自分のことは知らない人間というタイプの人間がいるのだとしたら、恭介はそれに当たるのかもしれない。
「きゃっ、ちょっと……恭ちゃん」


体勢を真逆に、祢音を押し倒すような形で恭介が上になった。
肉を求めるような手の動きで、自分もシャツをはだけさせ、すぐに上半身を露出する。
それに合わせる様に、祢音もまた、ゆったりとした動作で布を一枚一枚剥いでいった。
祢音は、この肉欲にまみれた恭介が好きだと、無意識に思っている。
普段は冷静な恭介が祢音のことを求めるときにだけ見せる、獣のような欲望を。
そのギャップが、祢音はとても好ましく感じている。
身をよじるように抵抗してみせるが、これは本気ではない。こうして焦らすことによって、恭介の欲望をさらに引き出そうとする試みなのである。
自分から意識しているわけではない、ただなんとなく、こうすれば恭介が激しくなるというのは女として感じているのである。
「祢音……」
唇を求められ、それに答えるように軽く口を上げた。
最初くらいは主導権握りたいなって思うのは、悪いことじゃないよね。
どうせ乱れ始めると止まらないのは恭介よりもむしろ祢音のほうだ。だから、こんな恭介の顔を独り占めしてもいいかななんて、思ってしまう。
「恭ちゃん、祢音のこと、もっともっと気持ちよくさせて」
「あぁ、いつもみたいに、な」
いつもみたいにという言葉を聞いて、祢音の身体がふるふると震えた。
その白く艶かしい肌が、雄を求めて歓喜している。
「もう……湿ってる」
「うん……恭ちゃんが悪いんだよ。こんなに、気持ちいいこと教えてくれたから」
純粋な祢音に女性としての喜びを教えたのは、確かに恭介である。
ただ、それは本気で恭介を非難しているわけではない。もともと、動物的衝動に快楽を伴ったものに過ぎないその行為自体に、穢れも糞もない。
むしろ、人間の基本衝動に忠実に従うのであるのだから、それは正当な行為だと呼ばれてしかるべきである。
「祢音……」
吸い付くように首筋に口付けをされ、そのまま、ゆっくりと乳房のほうに唇が移動していく。
恭介の唇は、少しカサカサしていて、その感覚がくすぐったくて、でも気持ちよくて、祢音は苦笑してしまった。
まるで子供みたいね、と恭介の頭を今度は逆に撫でる。
背徳的と感じるか感じないかは、それぞれの思考によるものだ。だから、純真無垢な祢音がこの行為を純粋に、心地よい行為だと思うのであれば、それは決して道徳的にいけない行為だとか、神に背徳する穢れた行為などではない。
そういえば、恭ちゃんは神様なんか信じてないって、言ってたよね……。
祢音のほうは、実は少しだけ、神様の存在を信じている。
少なくとも、恭介との出会いは今の祢音にとっては日々を充実させるためには欠かせないものになっていた。
自分でもよくわからないけれど、とにかく一緒にいて落ち着くし、退屈するわけでもない。
だから、この出会いが神様の与えてくれたものだとしたら、一緒に居させてくれるのだとしたら、少しだけ感謝してもいいかなと、そう思っているのだ。
はぁ……と、甘い香りを伴った呼気に変化していく自分。
もうそろそろ、堪えきれないのだと自覚する……。
「恭……ちゃん、もっと、もっと触って……おっぱい、だけじゃなくてもっと、下のほうも」
「下なんていわれても、俺はわからない」
「ん、意地悪……」
恭介は、結構言葉責めが好きなタイプらしい。
仕方なしに自分の手を秘所に当て、ゆっくりと上下させた。ぬちゃっと言う擬音が、とても卑猥に感じてしまう。……自分の身体なのに。
「ここ……してほしい」
「よく言えたな」
恭介の大きな手が、祢音のかすかに震えている頭を撫でる。
実は祢音は、この瞬間が何よりも好きだと、そう思っている。こんな近しい関係を持った人間は、肉親ですらない。
こんなに、自分に踏み入れさせた人間なんてそうそういなかった。
こんなに色々教えてくれた人も、いなかった気がする。
「恭ちゃん……気持ちよく……して?」
疑念の伴った言葉に対する返事は、指で来た。
自分で上下させていた秘所に、今度は恭介の指が、撫ぜ上げるように触れてくる。
それだけで、その感覚だけで、何かが突き上げてくるような気が、祢音にはしていた。
一方、恭介のほうも早く繋がりたいと思う気持ちで胸が張り裂けそうだった。
「ふぁ、あぅっ……んっ、恭ちゃっ……」
最後のほうは消え入りそうなほど小さい声になっているけれど、本当に祢音はいい声を出す。
仕草も、いちいち女らしい。しかし、その女らしさは決して嫌なものではなく、本当に情欲を誘う、可愛らしいものだった。
「祢音、もう、びちゃびちゃ……本当に今日は朝からそのつもりだったんだな」
「うん……だってその……前したときから結構経ってたし、それに私だって……」
子供じゃないんだよ、と真剣な顔と真剣な声で言ってきた。
十分、子供だと思う。
自分の快に、祢音はすぐに屈服する。自分の不快に、祢音はすぐに逃走する。
あらゆる意味で祢音は子供なのだ。
それを無自覚にも感じているからこそ、恭介のことを構い、ちょっかいを出してくるのだろう。
常識がない。彼女生来の考え方についていけるほど、人は単純ではない。
かといって恭介が単純かどうかと言われると、それも決してイコールではなく、恭介の生来の気質が作用しているのかもしれない。
子供を見守る父親の気質のようなものが、恭介にはある。
だから、祢音の我侭にも平気な顔をして付き合うし、駄目なことはしっかりと叱る。
そういった父性が、恭介は強いのである。
子供にこんなことする親には、絶対になりたくねぇが……。
「祢音、もう……いいか?」
「ん、恭ちゃんの準備がいいなら……」
誘うように両足を広げる祢音の間に、恭介は割って入る。
前戯は十分。恭介のほうも、ここ数日溜まっていたわけだから準備する必要性などまったくない。
自らの欲望を具現したような一物を、祢音の濡れた秘所にあてつけた。
「入れる……。大丈夫だな?」
「私のことそんなに心配しなくてもいいから。気持ちいいのは、好きだからさ」
はぁ、はぁと荒れた呼吸。
粒のような汗はつと、つとと艶かしい肌を流れ落ちて、皺になったシーツにその水分が染み込んだ。
「んっ、くっ……ふっ……うん」
入る瞬間はまだ気持ちが悪いのか、少しだけ喘ぎながら、祢音は身体をよじらせる。
でも、それは挿入の行為から逃げているわけではなく、むしろその行為を手助けするように動いているように見えた。
その甲斐もあり、恭介はそんなに労せず、祢音の中に入りこむ。

相変わらず、搾り取るようなきつさだなと思った。
確かに回数をそこまでしているわけではないから、生娘のようにきつい、という用法を用いるなら祢音はそれに当てはまるだろう。
もっとも、恭介の生娘との経験は祢音としかないため、喩えようがないのも事実であるが。
「祢音、昨日の夜も……自分で慰めてたんじゃないだろうな?」
びくんと、祢音の肩が震えた。
すでに主導権は祢音から恭介へと移っており、祢音は小さく首を振るだけだ。
「嘘……だよな?ほら、こんなに快感に慣れてる……」
ず、ずずっと腰を動かすと、祢音から小さい嬌声と共に濡れた空気の音が聞こえてきた。
この瞬間の祢音の顔が、恭介は好きなのである。
この征服感だけは、他の誰にも渡したくない……。どこか、黒い感情がわきあがってくる。
普段の恭介から考えられないことだ。
乳首に吸い付き、わざと音を立てる。
「んあぁっ、恭……ちゃんっ……」
「嘘は、俺は嫌いだ」
嘘をつかない人間なんていない。
聡い恭介なんだから、嘘をつかないなんてことは絶対にない。
それでも祢音に嘘をつかせたくないのは、彼女の純粋さを恭介が理解できているからである。
自分は穢れていてもいいから、祢音には真っ白なままでいてほしい。
そんな願いが、彼にはある。
祢音は恥ずかしそうに顔を向けながら、恭介の目をじっと見ていた。
「して……たよ……。恭ちゃんとしない日は……毎日してたよっ。だって、恭ちゃんが教えてくれたんじゃない……。恭ちゃんが、自分が出来ないときはって教えてくれたんじゃないっ」
目筋に沿って、光の筋がつと流れ落ちる。
光の筋……の正体は涙なのだが……はとても白く、純粋で、それ故に胸が熱くなる。
その白さに比例するかのように、恭介の心根は益々、欲情に駆られていく。
「気持ちいいの、好きなの。私、すごく好きだから」
涙はすでになく、その顔には無邪気な笑みが佇んでいた。
恭介の顔は、もしかすると笑っていたのかもしれない。優しく……。
それがとても安心できるのか、祢音の顔も、安心できる笑顔に変わったのかもしれない。
「そうか……じゃぁ、もっともっと、気持ちよくしてやるよ」
「うんっ、いっぱい、いっぱいしてほしいよ……。私、もっともっと恭ちゃんにしてほしいっ」
胸に届く、祢音の言葉。
その言葉に答えるかのように、恭介は唇を……頬につけた。
こうした中で、恭介が唇に口付けをすることはない。別に、昔の彼女を引きずっているとかそういうわけじゃなくて、祢音と恋人同士ではないのだから……こういう時に覚悟もなく口付けなんてしたくない。
結局は、半端なのである。
そういえば……と、思い至る。
先ほど、メールを送ってきた後輩は、長い休暇を得てこちらに戻ってきたときにおかしなことを言っていた。
『先輩、人間……大切な場所があるのは心地いいことだよ』
意味がわからなかったけれど……。
少なくとも、その場所を祢音の隣だと、恭介は決め付けるつもりはない。
それでも、その場所が祢音であればいいなと、まったく思っていないわけでもない。
祢音の隣は、それだけ居心地がいいのだ。
らしくないな……本当に、俺らしくない。
祢音は今、恭介の中で揺れている。恭介の行動の一つ一つを、彼女は全て受け止めて、それを返してきてくれる。

「恭ちゃんっ、恭ちゃんっ……!」
祢音が、一際大きく震えた。
それに習うように、恭介も己の分身を祢音の中から解き放つ。
脈動する自らを見ながら、止めることの出来ない射精の衝動を眺めながら、白く染まっていく祢音を恭介は見続けた。

―――――その光景は、とても淫らで、とても艶かしいものであったと同時に……白く、純粋なものであった。

そのままだらだらと……日が暮れるころまで、二人は抱き合いながら、時たま身体を重ねた。
結局、何のために祢音は恭介を呼び出したかというと、ただ単純に身体を重ねたかっただけ、なんだと思う。
「恭ちゃんは本当に、不摂生だよね」
ベッドで横になる恭介の脇を、着替えを終えた祢音が部屋の掃除をしていた。
確かに、男一人暮らしともなると部屋は汚れ放題で掃除もままならない。
だから、こうして祢音が家に来たときは掃除をしていってくれるのがほぼ通例となっていた。
「まったく、ちゃんと食べてないんだし、一人暮らしなんかするよりもまだ寮にいたほうがよかったんじゃないの?」
バササっと無駄そうな雑誌もまとめてゴミ袋に入れてしまう。
中にはまだ読んでないのもあったのだろうが、そんなことはどうでもいい。
なんとなく、祢音の掃除している姿を眺めていたくて、それだけに集中していた。
「ねぇ、恭ちゃん、聞いてるの!?」
余りにも心ない返事に腹を立てたのか、祢音が多少憤った響きを伴いながら恭介のほうを振り返った。
それにあぁ、とやはり気のない返事を返して……内心は冷や汗ものだったが……恭介は微笑む。自分でも、こんなに自然に笑みが出るのは珍しいなどと思ってしまった。
「寮に住んでいたって変わらないさ。汚くなる部屋は汚くなる。飯だってサークルのみんなと食えば自炊の必要ないだろ?それに、そうじゃなけりゃコンビニで用事なんて事足りるしな」
「まったくもう、そんなことばっかり言ってるから……」
こういう、世話焼きの精神がどこまでもついてくるのが祢音なのかもしれない。
だけど……。
恭介は立ち上がると、祢音の腕をがしっと掴んだ。
どうしてそんなことをしたのか、恭介も理解出来ずに、祢音もどこか不思議な顔をして恭介を眺めている。
「恭ちゃん?」
祢音の瞳に映っている恭介の顔は、どことなく不安そうなものだった。
あぁ、こんなにも俺は情けないのだな……。
だから一言、こう言って……恭介は目を閉じた。
出来るだけ優しく微笑むことが出来るように、と……。
「祢音、今日はどうもありがとう」
閉じた先の視線には、まだ祢音がいるはずだ。
「うぅん、こっちこそ、無理に押しかけちゃったみたいな感じでごめん。買い物に行こうって話だったのにね」
そういえば、そんなことも言っていた。とっくの昔に忘れていたことだった。
「いいや、気にしてない。むしろ……悪かったなって思ってる」
「そんな、謝っちゃやだよ。恭ちゃんは私の望み通りにしてくれたんだからね」
目を、開けた。
そこには、満面の笑みを携えた、いつもの祢音がいた。
「また、来てもいい?その……エッチなことするだけじゃなくて、今度は、普通に会いに」
大学でも、どこでも、恭介と祢音は会っている。
でも、こうして会いに来たいということは……。
「祢音、俺は嘘つきは嫌いだって、言ったよな」
恐らく、祢音の本音は変わらない。会いたい、一緒に居たいと思うことは、恋人じゃなくても望んでもいいこと。
「う……ごめん。じゃぁ、エッチなこともするのを前提に、遊びにきていいかな」
雨に濡れた猫のようだった。
だから、恭介はフっと息を吐いて、アークロイヤルに手をつける。
エッチの直後には煙草は吸わない。恭介がそう決めているのは、相手を思いやってのことである。
だから、しばらく経った今、ようやく一本に火をつけて……、
「あぁ、そういうことなら、大歓迎だよ。もっとも、エッチはなくても、俺は祢音と一緒にいたいなんて思ってるけどな」
あー、恭ちゃんずるい、などと、少しばかり膨れながら言う祢音の頭を撫でた。
「でも、私……」

「そんな恭ちゃんが、大好きだよ」

その言葉に、恭介の胸はなぜか満たされていく感じがしていた。